家づくりを考え始めると、最初に気になるのが「うちはいくらまで借りられるんだろう」というお金の上限です。予算がわからないと、土地も間取りも決めようがありません。金融機関に相談すれば「◯◯万円まで融資できます」という金額は出ますが、じつはその金額と、あなたの家計にとって「無理なく返せる金額」は、必ずしも同じではありません。
この記事では、借入額の目安を考えるときによく使われる「年収倍率」と「返済負担率」という2つのものさしを、やさしく整理します。数字に強くなくても大丈夫。考え方のコツをつかんでおきましょう。
「借りられる額」と「無理なく返せる額」は違う
まず押さえておきたいのが、この2つは別物だということです。金融機関が提示する「借りられる額」は、年収や勤続年数、他の借入状況などをもとに、審査上貸せる上限として計算された金額です。これはあくまで「貸す側から見た上限」であって、「あなたの暮らしがゆとりを持って続けられる金額」を保証するものではありません。
上限いっぱいまで借りてしまうと、毎月の返済に追われて、教育費や車の買い替え、レジャーや貯蓄に回すお金が足りなくなることもあります。大切なのは、借りられる額の中から、家計の実情に合わせて「無理なく返せる額」を自分で見極めることです。その目安になるのが、次の2つの考え方です。
年収倍率と返済負担率——2つのものさし
1. 年収倍率——年収の何倍まで?
年収倍率は、「借入額が年収の何倍か」を表す数字です。たとえば年収500万円で3,500万円を借りると、年収倍率は7倍になります。かつては「年収の5倍程度が目安」と言われた時代もありましたが、低金利が続いた近年は6〜7倍前後で借りるご家庭も珍しくありません。
ただし、倍率が高くなるほど返済のプレッシャーも大きくなります。年収倍率はあくまでざっくりとした目安として、「自分たちの年収に対して、借りようとしている額は大きすぎないか」を確かめる最初のチェックに使うとよいでしょう。共働きで世帯年収を合算する場合は、片方が働けなくなる可能性も念頭に置いておくと安心です。
2. 返済負担率——年収に占める返済の割合
より実感に近いのが返済負担率です。これは「年間の返済額が、年収の何%を占めるか」を表します。たとえば年収500万円で年間の返済が100万円なら、返済負担率は20%です。
一般に、返済負担率は20〜25%以内に収めると、家計にゆとりを保ちやすいと言われます。金融機関の審査では30〜35%程度まで認められることもありますが、それは「返せる上限」であって「快適に暮らせる水準」ではありません。手取り収入をベースに考えると、より現実的な感覚がつかめます。
手取りで考える。将来の変化も見込んでおく
返済負担率を計算するとき、注意したいのが「額面年収」と「手取り年収」の差です。審査では税込みの額面年収で計算されますが、実際に使えるのは税金や社会保険料を引いた手取りです。手取りは額面のおよそ8割前後になることが多いため、家計の余裕を見るなら手取りベースで返済負担率を確かめておくと、より安全です。
あわせて考えたいのが、将来の暮らしの変化です。お子さんの進学で教育費が増える時期、車や家電の買い替え、親の介護など、住宅ローン以外にもまとまった出費は必ずやってきます。今の家計だけでなく、10年後・20年後の支出も思い描いたうえで、返済額に少し余白を持たせておくことが、長く安心して暮らすコツです。
まとめ——上限ではなく、暮らしから逆算する
住宅ローンの借入額は、「いくらまで借りられるか」ではなく「いくらなら無理なく返せるか」から考えるのが基本です。年収倍率で全体感をつかみ、返済負担率(手取りベースで20〜25%以内が目安)で家計への影響を確かめる。この2つのものさしを持っておくと、金融機関が示す上限に流されず、自分たちに合った予算を落ち着いて判断できます。
家は建てて終わりではなく、その後何十年もの暮らしが続いていきます。将来の出費や収入の変化も見込みながら、少し余白のある返済計画を立てておく。それが、家づくりを楽しみながら、暮らしも守るための第一歩です。