リビング、ダイニング、キッチン。住まいの中心にあるこれらの空間を、ただの「部屋」ではなく家族の暮らしが交差する「ハブ(結節点)」として考えてみませんか。

近年、住宅設計の現場で注目されているのが「ファミリーハブスペース」という考え方です。特別な部屋を新たにつくるのではなく、LDKの一角にちょっとした工夫を加えることで、家族が自然と同じ空間に集まるようになる。そんな間取りのヒントを整理します。

「ファミリーハブスペース」とは何か

ファミリーハブスペースとは、LDKの中に設けた多目的なスペースのことです。リビング学習、テレワーク、読書、趣味の作業など、家族それぞれが「自分のこと」をしながらも同じ空間にいられる場所を指します。

子どもが宿題をしている横で、親が仕事のメールを打つ。その奥のキッチンでは夕食の準備が進んでいる。それぞれが別のことをしているのに、なんとなく一緒にいる。この「ゆるいつながり」こそが、ファミリーハブスペースの本質です。

個室ではなく「共有空間の中の居場所」

従来の住宅設計では、勉強は子ども部屋、仕事は書斎、くつろぎはリビングというように、用途ごとに空間を分けるのが一般的でした。しかし実際の暮らしを観察すると、小学生の子どもはリビングで宿題をしていることが多く、在宅ワークもダイニングテーブルで済ませている人が少なくありません。

つまり、専用の個室よりも「LDKの中にちょうどいい居場所がある」ほうが、家族の暮らしにフィットするケースが多いのです。ファミリーハブスペースは、この実態に合わせた設計の考え方です。

ファミリーハブスペースをつくる3つの工夫

1. カウンターデスクを壁面に設ける

LDKの壁面に奥行き45〜50cmほどのカウンターデスクを造作するのは、もっとも手軽で効果的な方法です。幅を180cm以上確保すれば、親子2人が並んで座れます。

ポイントは設置場所です。キッチンから目が届く位置に配置すると、料理をしながら子どもの様子が見えます。コンセントを2〜3口つけておくと、パソコンやタブレットの充電にも困りません。

2. 小上がりやタタミコーナーを設ける

リビングの一角に30〜40cmの段差をつけた小上がりスペースは、ファミリーハブとして非常に優秀です。段差があることで空間にメリハリが生まれ、「ここは自分の居場所」という感覚を持ちやすくなります。

タタミ仕上げにすれば、寝転がって絵本を読んだり、洗濯物をたたんだりと、多用途に使えます。段差の下を収納にすれば、おもちゃやランドセルの定位置にもなります。

3. キッチン横にマルチカウンターを設ける

対面キッチンの横やダイニングテーブルの延長線上にカウンターを設けると、料理中のちょっとした作業スペースとしても、子どもの宿題スペースとしても使えます。家事動線のすぐそばにあるので、「ちょっと見てあげる」がしやすいのがメリットです。

朝の支度の時間帯なら、子どもがカウンターで朝ごはんを食べている横で連絡帳を確認する、といった使い方もできます。

ファミリーハブスペースを活かす間取りの考え方

ファミリーハブスペースの効果を最大限に引き出すには、LDK全体の間取りとセットで考えることが大切です。いくつかの視点を紹介します。

LDKが18帖前後あれば、カウンターデスクや小上がりを設けても窮屈にはなりません。限られたスペースでも、壁面を活用したカウンターなら0.5帖分のスペースで実現できます。

まとめ:「一緒にいる時間」を間取りがつくる

ファミリーハブスペースの考え方は、特別な設備やオプションを必要としません。LDKの一角にカウンターを一本通すだけでも、家族の暮らし方は変わります。

子どもが小さいうちはリビング学習の場として。成長したら在宅ワークや趣味のスペースとして。家族のライフステージが変わっても使い続けられる柔軟さが、ファミリーハブスペースの魅力です。

「それぞれが自分のことをしているのに、なんとなく一緒にいられる」。そんな暮らしのかたちを、間取りの段階から考えてみてはいかがでしょうか。