間取り図を前に、なんとなく「広そう」と眺めて終わってしまう。家に帰って開き直し、あの弧の印は何だったのだろうと思い返す。よくあることだと思います。
平面図は、建物を床から1〜1.5mくらいの高さで水平に切って、上から見下ろした図です。ここでは記号・寸法・面積の3つに分けて整理します。
平面図の記号——窓・ドア・引戸と、開く向き
壁は2本の平行線で描かれます。その2本が途切れているところが出入口、途切れた部分に細い線が何本か入っているところが窓です。
いちばん目を引くのが、四分円の弧でしょう。これは片開きのドアを表していて、弧の中心(要)にあたる角が吊元(ちょうつがいのある側)で、弧がふくらんでいる側が扉の開く側です。部屋の内側へ開くのか廊下側へ開くのかが、弧のふくらむ向きで分かります。
向きが分かると、家具の話が具体的になります。扉が開く範囲には家具を置けませんし、スイッチを付けると開いた扉に隠れてしまいます。トイレや洗面室のドアを外開きや引戸にする例があるのは、中で人が倒れたときに外から開けにくくなるのを避けるためです。
引戸は、扉が壁に沿ってスライドする様子で描かれます。壁の中へ引き込むタイプなら、戸が納まる部分の壁は空洞です。スイッチやコンセント、棚を付けられないことが多いので、引き込む先がどちら側かを見ておくとよいでしょう。
もうひとつ。平面図には高さの情報がほとんど載りません。窓の記号を見ても、床まで下りた掃き出し窓なのか腰窓なのかは読み取れないのが普通で、窓の高さは立面図(建物を横から見た図)や建具表という別の書類に書かれています。
方位記号(北を指す矢印)は図の隅にあります。上を北にして描くのが基本ですが、敷地に合わせて傾けることもあるため、日当たりを考えるときは先に探してください。
寸法線と910mmのグリッド——数字が示しているもの
図の外側に並ぶ細い線と数字が寸法線です。建築の図面はミリメートルで書くのが原則で、単位記号は省略されます。「1820」とあれば1,820mm、つまり1.82mのことです。
910、1820、2730、3640という数字が繰り返し出てきます。日本の木造住宅の多くが、尺貫法に由来する3尺=約910mmを基本の刻みとして設計されているからです。尺モジュール、または910モジュールと呼ばれます。1,820mmはその2倍で、これが1間(いっけん)。この910×1,820mmが、いわゆる1帖ぶんの広さにあたります。
寸法は、壁の「芯」で測られている
つまずきやすいのはここです。平面図の寸法は多くの場合、柱や壁の中心線どうしの距離で書かれています。壁芯(かべしん)寸法といいます。実際に歩ける内側の寸法は、壁の厚みぶん小さくなります。
廊下が壁芯910mmで、柱が105mm角、その両側に厚さ12.5mmの石膏ボードを張ったとすれば、内側に残る幅はおよそ780mm。柱や仕上げ材によって前後しますが、「910と書いてあっても910は歩けない」という感覚は持っておきたいところ。
同じ「26坪」でも中身が違う——建築面積・延床面積・施工面積
つまずきやすいのが面積です。同じ家に、3つの違う数字が出てきます。
| 呼び方 | 何を指すか | 使われる場面 |
|---|---|---|
| 建築面積 | 真上から見たときに建物が覆う面積。外壁や柱の中心線で囲まれた部分 | 建ぺい率の計算 |
| 延床面積 | 各階の床面積を合計したもの | 容積率の計算(不算入の規定あり)、登記、補助金やローンの要件 |
| 施工面積 | 施工会社が工事の範囲として数えた面積。法律上の定義はない | 会社ごとの見積り・坪単価 |
延床面積も万能ではなく、容積率の計算では車庫や地下室など一部が差し引かれることがあります。ややこしいのは3つ目です。施工面積には法律上の定義がありません。バルコニーや玄関ポーチ、天井の低いロフト、吹抜け部分など、延床面積に入らない場所を工事の手間として数え入れることがあり、どこまで含めるかは会社ごとの判断です。
坪単価に何が含まれるかは会社ごとに違いますが、ここで見たいのはその手前、「何坪で割っているか」です。仮に延床面積26坪(約86m²)の家があり、バルコニーと玄関ポーチを足した施工面積は28坪だったとします。建物の総額が同じ2,340万円でも、割る面積を変えるとこうなります。
- 延床面積で割る——2,340万円 ÷ 26坪 = 坪あたり90万円
- 施工面積で割る——2,340万円 ÷ 28坪 = 坪あたり約83.6万円
いずれも説明のために置いた仮の数字ですが、同じ家・同じ総額なのに坪あたり6万円以上の差が出ました。
1坪は約3.31m²で、畳2枚ぶん。m²の数字を3.31で割れば、おおよその坪数が出ます。このサイトのプラン紹介では、面積は延床面積で書かれています。プランによっては「72.87m²(22.04坪)/施工面積 76.41m²(23.11坪)」のように両方が並んでいて、同じ家でも1坪ぶん違うことが見て取れます。
まとめ——読めるようになると、聞けることが変わる
決まりごとは多くありません。弧はドアの開く向き、単位はミリメートル、910の倍数が基本の刻み、その寸法は壁の中心で測られている。面積は建築・延床・施工の3つ。
変わるのは知識の量より、質問の中身です。「この扉、廊下側に開きますか」「この寸法は壁の芯ですか」「この坪数は延床ですか、施工面積ですか」。この一言が出るだけで、打ち合わせは具体的な相談に変わります。
手元の間取り図で、玄関から洗面室までを910の刻みで数えてみてください。見え方が変わるかもしれません。