地震、台風、大雨、停電、断水。日本で家を建てるということは、こうした「もしも」と無縁ではいられないということでもあります。最近よく耳にするようになった「レジリエンス設計」という言葉は、災害が起きたあとに、家族がそのまま暮らし続けられる住まいをつくるための考え方です。この記事では、レジリエンス設計とは何か、家づくりで意識したいポイントは何かを、できるだけわかりやすくお伝えします。

レジリエンス設計とは「折れない・止まらない」住まい

レジリエンス(resilience)は、もともと「しなやかに回復する力」という意味の言葉です。住宅の世界では、大きな災害を受けたあとも、住まいの機能が止まらず、家族がそこで暮らし続けられること、と理解するとイメージしやすいかもしれません。

従来の住宅設計では、「倒壊しないこと」を最低ラインに考えてきました。これはもちろん大切なことですが、地震や台風で家自体は倒れなくても、停電や断水で生活が成り立たなくなり、避難所暮らしを余儀なくされるケースは少なくありません。レジリエンス設計では、もう一歩踏み込んで「住み続けられること」を目標にします。

3つの軸で考えるとわかりやすい

レジリエンスは少し抽象的な言葉なので、3つの軸に分けて考えるとつかみやすくなります。

この3つを意識するだけで、「うちの家づくりに足りない視点は何か」が見えやすくなります。

家づくりで意識したいレジリエンスの要素

では、実際にプランを考えるとき、どんなところにレジリエンスの視点を持ち込めばよいのでしょうか。難しい話ではなく、いくつかの基本を押さえておけば十分です。

1. 構造と地盤に余裕をつくる

もっとも基本になるのが、構造そのものの強さです。耐震等級3を取得していること、できれば構造計算(許容応力度計算)に基づいて算出された等級であることが、ひとつの目安になります。さらに、地震エネルギーを吸収する制震ダンパーを組み合わせると、繰り返し起きる余震に対しても建物のダメージを抑えやすくなります。

また、いくら建物が強くても、地盤が弱ければ性能を発揮できません。地盤調査の結果に応じて適切な地盤改良を行い、建物と地盤をセットで設計するという視点が大切です。

2. 電気の自立を考える

停電は、近年の災害でもっとも頻繁に発生するライフラインの途絶です。長時間の停電になると、冷暖房・冷蔵庫・照明・スマホの充電など、暮らしの当たり前が一気に止まってしまいます。

これに備える基本装備が、太陽光パネルと蓄電池の組み合わせです。日中は太陽光で発電してそのまま使い、余った分は蓄電池に貯めて夜や翌日に回す。これだけで、停電が数日続いても最低限の生活を維持しやすくなります。電気自動車を蓄電池代わりに使うV2H(Vehicle to Home)という考え方も広がってきています。

3. 水と熱をできるだけ自前で持つ

断水時に効いてくるのが、エコキュートのタンクです。中にはお湯が数百リットル貯まっており、非常時には生活用水として使えます。雨水タンクを設けてトイレ用や植栽の水やりに使う家もあります。

熱の面では、断熱性能が「暮らしを止めない力」に直結します。断熱等級6以上の高断熱住宅であれば、エアコンが止まった真冬でも室温が一気に下がりにくく、家族の体力を奪われずに済みます。GX志向型住宅のように高い断熱性能を備えた住まいは、省エネだけでなく、災害時の安心にもつながっているのです。

4. 浸水・強風に対する立地と外まわりの工夫

ハザードマップで自分の土地がどんなリスクを抱えているかを必ず確認しましょう。浸水が想定されるエリアであれば、基礎を高めにしたり、コンセントの位置を床から少し上げたりといった工夫が効きます。強風地域なら、屋根材の選び方や軒の出にも配慮が必要です。

「土地を選ぶ段階からレジリエンスは始まっている」と覚えておくと、後悔のない家づくりにつながります。

「普段の快適さ」と「もしもの安心」は両立できる

レジリエンス設計と聞くと、特別な設備をいくつも追加しないといけないように感じるかもしれません。けれど実際のところ、高断熱・高気密、耐震等級3、太陽光、蓄電池、エコキュートといった設備は、多くがすでに高性能住宅の標準装備に近づいてきています。普段の暮らしを快適にしてくれる機能が、そのまま災害時の備えになっているのです。

大切なのは、「光熱費を抑えるため」「快適に暮らすため」だけでなく、「もしものときに家族を守るため」という視点を、家づくりの最初から少しだけ加えてみることです。そうすると、間取りや設備の選び方が、ぐっと納得感のあるものに変わっていきます。

家は、何十年と家族の暮らしを受け止める器です。晴れた日も、嵐の日も、その器がしなやかに家族を支えてくれるように。レジリエンスという言葉を、ぜひ家づくりの引き出しのひとつに加えてみてください。