新築の打ち合わせでは、太陽光発電、蓄電池、HEMSといった言葉が並びます。どれもエネルギーに関わる設備ですが、役割はそれぞれ違います。

「つくる」「ためる」「見える化する」。この3つに分けて考えると、自分の家に何が必要かが判断しやすくなります。

太陽光発電——「売る」から「使う」へ

屋根で電気をつくる設備です。かつては余った電気を電力会社に売る(売電)ことで元を取る考え方が主流でしたが、いまは事情が変わりました。

固定価格買取制度(FIT)が始まった当初と比べて売電価格は大きく下がり、一方で電気を買う単価は上がっています。売る値段より買う値段のほうが高い——この関係が逆転したことで、つくった電気を自分の家で使う(自家消費)ほうが得という状況になりました。

自家消費を増やすには、昼間に電気を使う工夫が効きます。食洗機や洗濯乾燥機のタイマーを昼に寄せる、給湯器の沸き上げを昼間に設定する。設備を足さなくてもできることがあります。

なお、FITの買取期間は住宅用で10年です。期間が終わったあと(いわゆる卒FIT)は、より安い価格で売り続けるか、蓄電池を導入して自家消費に振り向けるかの判断になります。

蓄電池——夜と、もしものための「貯めておく箱」

昼につくった電気をためて、夜に使うための設備です。太陽光だけでは日が落ちると発電が止まってしまうため、その時間帯を埋める役割を持ちます。

家庭用の蓄電池は容量5〜15kWh程度が中心です。本体と工事をあわせた費用は容量によって幅がありますが、決して安い設備ではありません。電気代の節約だけで元を取るのは、現時点では簡単ではないのが正直なところです。

それでも導入する価値があるとすれば、停電への備えという側面です。台風や地震で停電したとき、太陽光だけでは自立運転用のコンセント1か所しか使えませんが、蓄電池があれば冷蔵庫や照明、通信機器を通常どおり動かせます。この安心をどう評価するかが、判断の分かれ目になります。

後付けもできますが、あらかじめ設置場所と配線を想定しておくと工事は簡単になります。いま入れないとしても、置ける場所だけ考えておくのがおすすめです。

HEMS——見えないものを、見えるようにする

HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)は、家庭の電気の使用量や発電量を計測して、スマートフォンやモニターで見られるようにする仕組みです。

電気は目に見えないまま使われて、翌月に金額だけが届きます。HEMSはそこに「いま何にどれだけ使っているか」という情報を足してくれます。数字が見えると、行動は自然に変わります。設備そのものが節電するのではなく、住む人の判断材料を増やす道具だと考えるといいでしょう。

機種によっては、太陽光の発電状況に合わせて給湯器や蓄電池を自動で制御するものもあります。自家消費を増やしたい家庭ほど、効果を実感しやすい設備です。

太陽光パネル・HEMS・高効率給湯器などを標準装備とし、断熱等級6以上・BEI値0.65以下といった性能をはじめから満たしているのがGX志向型住宅です。つくる設備の前に、そもそも使うエネルギーが少ない——この順番が、いちばん確実にランニングコストに効きます。
夕暮れに、あたたかな灯りがともった住まいの窓辺

まとめ——順番は「減らす・つくる・ためる」

3つの設備を整理すると、太陽光は「つくる」、蓄電池は「ためる」、HEMSは「見える化する」。役割が違うので、どれか1つで足りるという話ではありません。

ただし優先順位はあります。もっとも効くのは、そもそも使うエネルギーを減らすこと——つまり断熱・気密性能です。器の穴をふさがずに水を注いでも追いつきません。性能を確保したうえで太陽光をのせ、必要に応じて蓄電池を検討する。この順番で考えると、費用のかけどころを間違えにくくなります。